普通解雇に関する裁判例(東京地判平成24年3月27日)

  • 2017/07/12
  • 宮本ブログ

期限の定めのない雇用契約は,いつでも解雇の申し入れをすることができます。
もっとも,解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合には,無効とされます。

今回ご紹介する裁判例,東京地判平成24年3月27日(平成23(ワ)1934号地位確認等請求事件)は,労働者の労働能力の不足を理由として行われた解雇の有効性が争われたケースです。
結論としては,本件解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上も相当と認めることはできないから,無効であると判断されました。

以下,その理由を示した部分を一部抜粋します。

「本件解雇は,原告の勤務成績不良を理由とする解雇であるところ,このような解雇については,当該労働者の勤務成績が単に不良であるというレベルを超えて,その程度が著しく劣悪であり,使用者側が改善を促したにもかかわらず改善の余地がないといえるかどうかや,当該勤務成績の不良が使用者の業務遂行全体にとって相当な支障となっているといえるかという点などを総合考慮して,その有効性を判断すべきと解するのが相当である。したがって,本件解雇に関する就業規則所定の解雇事由「技能,能力が極めて劣り,将来業務習得の見込みがないとき」という文言も,このような観点からその該当性が判断されるべきである。
 …これを本件についてみるに,確かに,原告については,平成20年度及び平成21年度については,いずれも総合評価は「2(不十分)」とされ,本件個人スコア制度が始まった平成21年度以降,原告は,被告から原因分析及び改善計画を記載した書面の提出を複数回にわたり指示されている。そして,同書面中において,原告は,コールセンター業務における自らの勤務成績が振るわない原因として,平成21年度には発信音の後声が出なくなることがあることや,顧客からの依頼に基づく調査時間や後処理の時間が長いことなどを挙げているが,平成22年度の原因分析を見ても,キャンペーン内容の読み込みができていなかったことや顧客の質問の真意を正確に聞き出せないといったごく基本的な内容を挙げており,このような点に照らすと,原告についてこの間の能力の向上が認められないとする被告側の認識にも一理あるところである…。
 このような事情に加えて,原告がベテラン職員であることなどからすれば,被告が,原告に関し厳しい評価をし,改善の余地が乏しいと考えたこともあながち理解できないわけではない…。
 …しかし,上記書面を提出した後の平成22年5月以降(サマー2010(宮本注:平成22年5月から同年10月))についての原告の個人スコア(宮本注:この会社は,取った電話の本数や処理時間を点数化する個人スコア制度と呼ばれる評価制度を導入して,従業員の業績評価を行っていたようです。)は,当該期間を通じての平均値でスタッフ全体の平均値を上回っているし,被告において問題視される「スタッフ全体の平均値を20パーセント以上下回った週」の数も,ウインター2010(宮本注:平成21年11月から平成22年4月)と比較して減少しており,原告の業績は,それ以前と比較して明らかに向上していることが認められる。
 …また,被告は,上記サマー2010の期間中においても,平成22年9月ころ以降は,スタッフ全体の平均値を20パーセント下回る週が増えるなど原告の業績は再び悪化した旨主張するが…,好不調の波は誰でも存するというべきであり,現に同年10月に入ると原告のスコアは再度全体の平均値を上回っているものであるから…,このような局所的なスコアの低下をもって,原告の勤務成績に改善がみられないと評価することはできない。
 …以上を要するに,従前,原告の勤務成績が芳しくなかったことは否めないものの,サマー2010の期間に至って一定の向上をみたものであるから,もとよりその勤務成績が著しく劣悪であるとはいえないし,改善の余地がないということもできない。したがって,原告について,被告の就業規則所定の解雇事由「技能,能力が極めて劣り,将来業務習得の見込みがないとき」に該当するということはできないから,本件解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上も相当と認めることはできず,無効というべきである。」

一般に,解雇の相当性はかなり厳格に判断される傾向があります。

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