スキー場における衝突事故につき上方滑走者であるスノーボーダーに損害賠償責任が認められた事例

  • 2016/01/04
  • 宮本ブログ

神戸地判平成11年2月26日判タ1050号170頁です。
ちなみに,私は,寒がりなのでウィンタースポーツが全般的に苦手ですが,雪国育ちなのでスキーぐらいはできます。

 原告は,「三二才の女性であり,スキー場を訪れた回数は本件事故当時三回しかなく(通算日数七日間),緩斜面においてプルークボーゲン(筆者注:いわゆるボーゲンのこと)ができる程度のスキー初心者」であり,「被告は,本件事故当時,二五才の男性であり,五,六年前から一シーズンに三〇回くらいスノーボードをしてきたものであり,アマチュアのスノーボード大会の出場経験も数回あるものであって,スノーボードの上級者」であったとされています。
 同原告・同被告の過失割合に関して,裁判所は,以下のように判断しました。

「1 右認定事実によれば,被告は,中者用のゲレンデをかなりの速度で滑降してきて,本件ゲレンデ上部の急斜面でさらに加速し,そのまま特に減速せずに初級者用ゲレンデである本件ゲレンデ内に突入したのである。そして,下方約一五メートルの地点で,プルークボーゲンでゆっくり右方に滑走している原告を認めたのであるから,原告の動きを注視しつつ,減速し或いは安全な方向に進路を変えるなど,原告への衝突を避ける措置をとるべきであった。しかるに,被告は,僅かに進行方向を左に変えただけで,減速せず,原告の動きを注視せずに滑走を続けたため,約七メートルの地点で,方向を変えて左方に進行している原告を再び認めた時には,自らの進行方向を変更することができず,そのまま原告に衝突したのである。そして,前記ゲレンデの状況によれば,非行が右衝突回避措置をとることに支障があったような事情を認めることはできない。したがって,右衝突回避措置をとらなかった被告には過失があるといわざるをえない。

2 これに対し,被告は,
(1)原告が本件ゲレンデを練習場所として選択したこと,
(2)原告及び太郎が周囲の安全確認を怠ったこと,
(3)原告が急な進路変更をしたこと
に過失があると主張する。

 しかし,本件ゲレンデが初心者用のゲレンデであることは前記のとおりであり,また,本件スキー場に比較的スノーボーダーが多いとしても,本件事故当時,特に混雑していたわけでもなく,原告が本件ゲレンデで滑走したこと自体が過失を構成することはあり得ない。また,原告及び太郎は,原告が滑走を始める前に,周囲の安全を確認したことは前記のとおりであるし,原告が予想することの困難な方向転換をしたと認めるに足る証拠はない。
 したがって,被告の右主張はいずれも失当である。
 
 なお,スキー場においては,上方から滑走する者に,前方を注視し,下方を滑走する者の動静に注意して,その者との接触・衝突を避けるべく速度及び進路を選択して滑走すべき注意義務があるというべきである。これに対し,下方を滑走する者は,コースが混雑し,見通しが悪いなどの特段の事情のない限り,後方を注意する義務は原則としてないというべきである。
 よって,過失相殺の抗弁には理由がない。」

 この事件では,下方滑走者の責任を否定しましたが,下方滑走者の責任を認めた裁判例も複数あります(詳しくは,長野県弁護士会編『自然をめぐる紛争と法律実務』132頁以下)。

 今年,石川県では,雪もほとんど降らず,暖冬が続いています(平成28年1月4日現在)。本格的なシーズンはこれからになるとは思いますが,スキー,スノーボードをされる方々は十分にお気を付け下さい。
 今回,全国スキー安全協議会「スノースポーツ安全基準」(http://www.jsba.or.jp/beta/userdata/data/sssg.pdf)というものがあることを知りました。ご参考まで。

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