2015.4.14高浜原発運転差止仮処分命令の意味

  • 2015/04/20
  • 鹿島ブログ

1 仮処分命令とは

福井地方裁判所は,2015年4月14日,高浜原発3,4号機の原子炉を運転してはならないとする仮処分命令を発令しました。決定文

この仮処分命令は,訴訟の結論を待っていては著しい損害が生じるおそれがあるときに仮の地位を定めるもので,本決定は,「本件原発の運転によって債権者らは取り返しのつかない損害を被るおそれが生じることになり,本案訴訟の結論を待つ余裕がな」いとして,債権者ら(住民側)の仮処分申請を認容しました。

仮処分命令は,通常の判決とは異なり,直ちに効果が生じるため,高浜原発3,4号機は再稼働できない状態になりました。

2014年5月21日の大飯訴訟判決も大飯原発3,4号機の運転差止めを命じましたが,関西電力が控訴したため,判決が確定しておらず,法的には再稼働できる状態であるのと異なります。

これまでの原発訴訟においては,住民側が勝訴した裁判が3件ありましたが(志賀原発金沢地裁判決,もんじゅ名古屋高裁金沢支部判決,大飯原発福井地裁判決),今回のように仮処分申請が認容されたのは初めてです。

2 いつまで仮処分命令の効果が続くのか

仮処分命令は,暫定的な処分ですが,いつまで仮処分命令の効果(=再稼働できない状態)が続くのでしょうか。少し複雑ですが,①異議等によって仮処分命令が取り消される場合,②執行停止が命じられる場合,③本案訴訟で運転差止請求が棄却される場合のいずれかにならない限り,仮処分命令の効果は続きます。

①関西電力は,仮処分命令に対し,異議を申し立てることが考えられます(4月19日に異議が申し立てられました。)。この異議の裁判は,高裁ではなく,福井地裁で行われることになります。この異議が認容される場合は仮処分命令が取り消され,異議が却下される場合は仮処分命令が認可されることになります。この異議の裁判に対しては,高裁に抗告することができます。

②このように,関西電力が異議を申し立てても,異議の裁判中は仮処分命令の効果が続くことになります。そこで,関西電力は,異議申立てに伴い,執行停止を申し立てることが考えられます(4月19日に執行停止が申し立てられました。)。執行停止は,異議等の結論が出るまでの間,一時的に仮処分命令の効果を停止させる裁判です。もっとも,この執行停止は,極めて厳格な要件の下でしか認められておらず,本件で執行停止が命じられる可能性はほとんどないと考えられます。

③まだ本案訴訟は提起されていませんが,仮に,本案訴訟で住民側の運転差止請求が棄却され,この判決が確定してしまうと,仮処分命令は取り消されます。また,請求棄却判決が上訴により確定していない状態であっても,仮処分命令が取り消される場合もあります。そのため,関西電力は,住民側に本案訴訟の提起を求めて,起訴命令を申し立てることが考えられます。起訴命令が定める一定期間内に本案訴訟を提起しない場合は,仮処分命令は取り消されるため,住民側は,本案訴訟を提起することになります。

以上のように,仮処分命令の効果が失われる場合を説明しましたが,要は,関西電力が逆転勝訴しない限り,仮処分命令の効果(=再稼働できない状態)が続くと考えて頂ければと思います。

3 本決定の内容

本決定の内容は,素晴らしい内容であった大飯訴訟判決をさらに進化させた内容となっています。いくつか簡単に紹介します。

まず,①本決定は,「新規制基準は緩やかにすぎ,これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない。」,「新規制基準は合理性を欠くものである。そうである以上,その新規制基準に本件原発施設が適合するか否かについて判断するまでもなく,債権者らの人格権侵害の具体的危険性が肯定できるということになる。」と判示し,新規制基準の合理性を否定し,新規制基準に適合しても,安全性は確保されないことを明らかにしています。高浜原発3,4号機のみならず,川内原発1,2号機も新規制基準に適合したとされていますが,田中俊一原子力規制委員会委員長の発言からも明らかなとおり,新規制基準に適合しても安全性が確保されているとはいえません。

次に,②本決定は,「万が一の事故に備えなければならない原子力発電所の基準地震動を地震の平均像を基に策定することに合理性は見い出し難いから,基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っていることになる。」と判示し,本件原発の基準地震動の信頼性を否定しました。このように,過去の地震の平均像を基に策定されているにすぎない基準地震動を超える地震が起こることは当然であり,私たちは,内山成樹弁護士を中心として,このことを最も重要な問題として主張してきました。基準地震動が過去の地震の平均像を基に策定されていることは,本件原発に限らず,日本のすべての原発に共通する問題です。

次に,③本決定は,「本件原発の運転開始時の基準地震動(S2)は370ガルであったところ,安全余裕があるとの理由で抜本的な耐震補強工事がなされることがないまま,550ガル(Ss)に引き上げられ,更に新規制基準の実施を機に700ガル(Ss)にまで引き上げられたことが認められる。」,「安全余裕は構造物の安全性を脅かす不確定要素の程度を意味するのであり,安全性の高さを示す概念ではないから,構造物の完成後において安全余裕の存在を理由として基準が引き上げられるようなことはあってはならないはずである。」と判示しています。各地の原発で基準地震動が引き上げられていますが,本件原発と同じように,抜本的な耐震補強工事がなされないまま安全余裕の吐き出しが行われているにすぎないと考えられます。

次に,④本決定は,「債務者は本件原発の安全設備は多重防護の考え方に基づき安全性を確保する設計となっていると主張しているところ,原発の安全性を確保するためには多重防護の考えに立つことが不可欠であることに異論の余地はないことであろう。しかし,多重防護とは堅固な第1陣が突破されたとしてもなお,第2陣,第3陣が控えているという備えの在り方を示すと解されるのであって,第1陣の備えが貧弱なため,いきなり背水の陣となるような備えの在り方は多重防護の意義から外れるものであると思われる。」と判示し,多重防護の考え方に基づき判断しました。この多重防護の考え方は,原発の設計思想の根幹をなすものであり,当然のことではありますが,原発訴訟においてもこの多重防護との考え方に基づき判断すべきことを示した本決定の意義は大きいと考えます。

最後に,⑤仮処分命令を発令するにあたっては,担保を求められることが通常ですが,本決定は,「本件事案の性質上,債権者らに担保を求めることは相当でない。」と判示し,本件のような人格権に基づく妨害予防請求権を被保全権利とする仮処分においては,担保は不要であることを明らかにしました。

4 脱原発が実現する日は近い

本決定の翌日である2015年4月15日をもって,日本の原発が1基も動いていない期間が1年7か月となりました(大飯原発4号機が2013年9月15日に定期検査により運転を停止して以降,原発は再稼働されていません。)。

本決定によって,高浜原発3,4号機を再稼働することはできなくなりました。

川内原発1,2号機の再稼働が進められようとしていますが,これを止めることができれば,丸2年,2度の夏を原発なしで過ごすことになります。

これで誰しも原発はいらないことを認めざるを得なくなるのではないのでしょうか。

脱原発が実現する日は近いと思います。

輝かしい大飯訴訟判決と本決定を維持することはもちろんのこと,川内原発の再稼働を止めるため,皆でもうひと頑張りしましょう。

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