高浜仮処分決定批判批判④入倉孝次郎京都大学名誉教授(続)

  • 2015/05/21
  • 鹿島ブログ

先日,入倉孝次郎京都大学名誉教授の高浜仮処分決定に対する「事実誤認」批判に対する批判記事を書きましたが,また入倉教授が高浜仮処分決定に対する「事実誤認」批判をしていますので,再度検証したいと思います。

県民福井の2015年5月20日付け記事です。

地裁決定はこれ(引用者注:入倉教授の愛媛新聞記事における発言)を引用し「原発の基準地震動を地震の平均像を基に策定することに合理性は見いだしがたい」と指摘。地裁は再稼働差し止めの根拠の一つに挙げた。入倉氏によると,発言はレシピの計算式の根拠について述べたもので「基準地震動の策定方法と混同したのではないか」と推測する。入倉レシピでは過去の地震動を分析し,地震エネルギーに対する断層面積の平均値を計算。断層面積から起こり得る地震の最大のエネルギーを算出できるようにした。地質構造などを加味し,その地震動を予測する。基準地震動は入倉レシピを応用し,地盤の固さや地震の伝わりやすさなどの立地条件を,より詳細に分析した上で決められる。

http://www.chunichi.co.jp/kenmin-fukui/article/kenmin-news/CK2015052002000197.html

 

入倉教授は,高浜仮処分決定がレシピの計算式の根拠についての入倉教授の発言を「基準地震動の策定方法と混同したのではないか」と推測しているようですので,高浜仮処分決定の判示を確認したいと思います。

「加えて,次の事情も本件原発の基準地震動の信頼性を失わせるものである。すなわち,活断層の状況から地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉孝次郎教授は,新聞記者の取材に応じて,『基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが,そうではない。』『私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが,平均からずれた地震はいくらでもあり,観測そのものが間違っていることもある。』と答えている。確かに,証拠によれば,本件原発においても地震の平均像を基礎としてそれに修正を加えることで基準地震動を導き出していることが認められる。万一の事故に備えなければならない原子力発電所の基準地震動を地震の平均像を基に策定することに合理性は見い出し難いから,基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っていることになる。」(31頁)

このように,高浜仮処分決定は,「地震の平均像を基礎としてそれに修正を加えることで基準地震動を導き出している」として,基準地震動が平均像に修正を加えたものであることを認めた上で,それでも合理的でないと認定しているのです。入倉教授が推測するような「混同」は全くありません。

 

それでは,新規制基準下で策定された基準地震動は,平均像の何倍くらいになっているのでしょうか。

この点,原子力規制委員会で地震に関する新規制基準の策定に関わった藤原広行防災科学技術研究所社会防災システム研究領域長は,2015年5月7日付け毎日新聞記事で次のように述べています。

「実際の地震では(計算による)平均値の2倍以上強い揺れが全体の7%程度あり,3倍,4倍の揺れさえも観測されている」「平均から離れた強い揺れも考慮すべきだ」「今の基準地震動の値は一般に,平均的な値の1.6倍程度。実際の揺れの8〜9割はそれ以下で収まるが,残りの1〜2割は超えるだろう。もっと厳しく,97%程度の地震をカバーする基準にすれば,高浜原発の基準地震動は関電が『燃料損傷が防げないレベル』と位置づける973.5ガルを超えて耐震改修が必要になりかねない。コストをかけてそこまでやるのか。電力会社だけで決めるのではなく,国民的議論が必要だ」

http://mainichi.jp/shimen/news/p20150507dde012040002000c.html

このように,新規制基準の策定に関わった藤原氏によれば,新規制基準下で策定された基準地震動は,平均像の1.6倍程度のものであると述べています。

原発の耐震安全性を確保するための要である基準地震動が,平均像の1.6倍程度のものにすぎないことを知ったとき,皆さんはどのように思われますか?

TOPへ戻る